千葉工業大学「基礎科学セミナー」
基礎物理の話題を中心に, 最先端の研究成果をわかりやすく講演して頂きます。 ただし、内容は物理に限ったものではありませんので 開始から10年を機に核物理×物性セミナーから基礎科学セミナーへと名称を変更しました。
聴講者は千葉工業大学内外を問いません。
詳細は、係の安武(nobutoshi.yasutakeあっとit-chiba.ac.jp)まで。
日程: 不定期の土曜日(月一回を目安)
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
http://www.it-chiba.ac.jp/institute/campus/shinnarashino/
交通: http://www.it-chiba.ac.jp/institute/access/shinnarashino/index.html
Titles, Abstracts, and Presentation files
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第62回 "観測天文学における偏光現象と測定手法"
講演者:秋田谷 洋 氏(千葉工業大学 天文学研究センター)
日程:2024年10月26日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス3号館3F 第2物理実験室 *注: いつもと場所が異なります
<<要旨>>
観測天文学において重要な手法の一つが、天体が放射する電磁波の偏光(直線偏光・円偏光)を測定する偏光観測である。
天体が示す偏光の多くは、非等方的な物理現象を反映して放射される。例えば、天体の周囲の電子や塵粒子による光散乱は、散乱面に垂直な強い直線偏光を生む。そして、それらのトータルの分布が非等方であれば直線偏光が残る(星周円盤、新星・超新星の膨張光球、活動銀河核トーラスなど)。また、形状が偏った塵粒子を透過する天体光も直線偏光を生じる(星間偏光)。磁場が伴う物理現象も偏光の要因となる。シンクロトロン放射は強い偏光を示す(ブラックホール連星・活動銀河核・γ線バーストのジェット、超新星残骸など)。また、Zeeman効果により、原子・イオンのスペクトル線が波長分離してそれぞれが異なる偏光を示すこともよく知られている(強磁場星)。これらの偏光を測定することで、その放射・伝搬に内在する構造や物理パラメターを推測することができるのである。
本講演では、天体現象で生じる様々な偏光と、観測天文学における偏光の測定手法について概観する。
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第61回 "シミュレーションを活用した宇宙線起因ソフトエラー研究"
講演者:安部 晋一郎 氏(日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター)
日程:2024年6月8日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
放射線によって半導体デバイスの保持する情報が反転する現象(シングルイベントアップセット,
SEU)は、電子機器の一時的な誤動作(ソフトエラー)の原因となる。
宇宙環境では陽子や重イオンなどの一次宇宙線が数多く飛び交っているため、宇宙機に搭載される電子機器は高いソフトエラー耐性が求められる。
我々の住む地上環境においても二次宇宙線が空から降り注いでおり、これらが引き起こすソフトエラーが電子機器の信頼性を脅かす原因として問題視されている。
電子機器の信頼性を保障する上で、ソフトエラーの発生確率(ソフトエラー率,
SER)を事前に評価する必要があるが、全ての機器を実測的な手法で評価することは現実的ではない。
このような場面においては、シミュレーションが有用となる。
本講演では、放射線挙動解析コードPHITSを用いたソフトエラーシミュレーションに関する研究成果について紹介する。
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第60回 "Neutrino quantum kinetics in core-collapse supernova"
講演者:長倉 洋樹 氏(国立天文台 科学研究部)
日程:2024年5月11日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
太陽よりも約10倍以上重たい大質量星は、星の進化の最終段階に超新星爆発を起こす。超新星爆発を駆動している中心付近では、中性子星またはブラックホールなどの高密度天体が形成され、その周辺は超高密度(核密度以上)かつ高温(数千億度)が実現される。このような環境下では、強い力や電磁力を介して相互作用している粒子同士は、局所熱力学平衡状態が達成され、これらの粒子のダイナミックスは、流体もしくは磁気流体力学により記述できる。一方、物質中のバリオン及びレプトンの弱い相互作用によって生成されるニュートリノは、一般的に物質とは非平衡状態になるため、運動論的な取り扱いが必須となる。また、ニュートリノは弱い相互作用に起因して、互いに距離の離れた流体素片間のエネルギー及びレプトン交換の媒介粒子となり、これが超新星爆発メカニズムや爆発噴出物(エジェクタ)の元素合成を決める上で重要な役割を担う。
本セミナーでは、超新星爆発理論を概観するとともに、これらニュートリノ運動論について議論する。特に最近、ニュートリノ自己相互作用によって励起されるニュートリノフレーバー変換(もしくはニュートリノ振動)が超新星コア内で発生する事が確実となり、これに伴い超新星内のニュートリノ輸送の理論は、従来まで行われていたボルツマン方程式に基づく古典的運動論から、量子運動論への転換期を迎えている。本セミナーでは、近年我々が行なっている量子運動論的ニュートリノ輻射輸送シミュレーションの結果を交えて、本分野の現状を紹介し、さらに今後の課題についても議論する。
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第59回 " Quantum algorithm for the Vlasov simulation of the large-scale structure formation with massive neutrinos"
講演者:宮本 幸一 氏(大阪大学 量子情報・量子生命研究センター(QIQB))
日程:2024年1月20日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
量子コンピューティング技術が近年急速に発展しており、従来の古典コンピュータでは扱えなかった計算の一部を高速に実行することができると期待されている。様々な分野での実用的な応用が探索されており、宇宙論もそのひとつである。本講演では、massive neutrinoを取り入れた宇宙大規模構造(LSS)形成シミュレーションへの応用を検討する。ニュートリノに質量がある場合、ダークマターの一部としてLSS形成に影響を及ぼし、そのゆえ、LSSの観測からニュートリノ質量に制限を加えることができる。そのため、massive neutrinoを含んだLSS形成シミュレーションは、宇宙論・素粒子論にとって重要な課題である。しかし、古典コンピュータでこれを実行するのは容易ではない。ニュートリノに対しては、N体シミュレーションよりも、位相空間中の分布関数をVlasov方程式を解いて求めるというアプローチの方が望ましいが、これは空間6次元・時間1次元という高次元空間上の偏微分方程式を解くことに相当するためである。そこで、本研究では、このタスクのための量子アルゴリズムを検討する。ニュートリノ自己重力を無視し、CDMによる重力を外力として与えることでVlasov方程式を線形化した上で、微分方程式を解くための量子アルゴリズムを適用する。これにより、解を埋め込んだ量子状態が生成されるが、そこからニュートリノ密度揺らぎのパワースペクトルを数値として取り出す手法も提案する。著者らの知る限り、LSS形成シミュレーションの量子アルゴリズムのうち、実用上の興味がある量を保証された精度で出力するアルゴリズムとしては、本提案手法が最初のものである。
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第58回 "スーパーコンピュータを用いた磁性体研究:フラストレーションと五角形格子"
講演者:古内 理人 氏(兵庫県立大学大学院)
日程:2023年11月4日(土) 13:30ー15:00
場所:Webex(オンライン)
<<要旨>>
磁性体の研究において関心を集めている対象にフラストレーションがある。これは物質の磁性に寄与する電子のスピン同士が反対を向いて磁気的に安定化する場合、スピン同士のつながりが奇数角形の構造を持つことで生じる。このような物質はその磁性において特有の現象を示すことがあり、その機構はまだ完全に理解されておらず、その解明を目指した研究が現在も進められている。本研究ではこの状況において非常に優位性のある、「数値対角化」の方法を用いている。この方法は厳密な結果を得られる一方で必要な計算資源が膨大になるため、スーパーコンピュータを用いてその手法を実行している。本講演では、フラストレーションの中でも五角形に由来するものに重点を置き、その解析手法などについて紹介した後にそこに現れる現象の機構について最近の計算結果を基に議論する。
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第57回 "動力学模型による核分裂の理論計算"
講演者:田中 翔也 氏(理化学研究所)
日程:2023年2月25日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
核分裂は重い原子核が2体以上に分裂する複雑な反応過程であり、量子多体系である原子核の物理において最も興味深い現象の一つである。超重核などウランより重い元素で顕著であり、超重元素の合成や天体での元素合成、原子力分野においても重要な物理現象である。しかし、その反応過程の詳細は、実験的にも理論的にも未だによく理解されていない。本講演では、揺動散逸定理に基づくランジュバン方程式を採用した動力学模型による核分裂の理論計算および最近の研究成果、特に高励起エネルギーにて発生する核分裂と中性子放出の競合を扱ったマルチチャンス核分裂について議論する。
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第56回 "強相関フェルミ超流動: BCS-BECクロスオーバーを中心に"
講演者:田島 裕之 氏(東京大学)
日程:2022年11月12日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
強く相互作用するフェルミ粒子系は、現代物理学において様々な分野に現れると同時に多彩な物理現象を示す重要な研究対象である。特に、超伝導現象(電荷がなければ超流動)は理学・工学両面において科学の進展に大きな寄与をもたらしてきた。こうしたフェルミ超流動発現の鍵となるのは弱い引力により緩く束縛された2電子対(Cooper対)の形成である。フェルミ粒子間の引力相互作用を強めるとCooper対のサイズが小さくなり2体分子のBose凝縮へ連続的に変化していくBardeen-Cooper-Schrieffer (BCS)- Bose-Einstein condensation (BEC)クロスオーバーが予言されていたのに対し、この相互作用を変えるという一見アカデミックな状況が21世紀に入り冷却原子気体において実現された。その波及効果は冷却原子気体分野のみに留まらず、中性子星内部の超流動や物性系の非従来型超伝導の研究にも大きな影響を与えてきた。本講演では、冷却原子気体におけるBCS-BECクロスオーバーの基本的な性質を紹介したあとに、それらが他の系の強相関フェルミ超流動/超伝導とどのような関わりがあるかを議論する。
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第55回 "abc予想入門"
講演者:小野寺 一浩 氏(千葉工業大学)
日程:2022年10月15日(土) 13:30ー15:00 *注: いつもと場所が異なります
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス3号館3F物理第2実験室
<<要旨>>
2021年に望月新一によって証明されたabc予想の入門的な解説を行います。特にその意義について出来るだけ平易に説明する予定です。最近の進展についても触れるつもりですが、講演者の不勉強のため、望月により開発された宇宙際タイヒミュラー理論の内容についてはお話することが出来ません。ご了承下さい。
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第54回 "宇宙構造形成のスーパーコンピュータシミュレーション"
講演者:石山 智明 氏(千葉大学統合情報センター)
日程:2022年5月21日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
宇宙マイクロ波背景放射の観測などにより、宇宙にはダークマターとよばれる重力のみで相互作用する物質が、バリオンの5倍以上存在することが明らかになっている。宇宙の構造形成進化は、ダークマターの巨大な重力場のなかで、星や銀河などのマルチスケールな天体が、140億年という長時間にわたって相互作用する非常に複雑な過程である。したがって、大規模かつ高精度なシミュレーションが必要不可欠である。
我々はスーパーコンピュータ「京」などを用いて宇宙構造形成シミュレーションを行い、模擬天体のカタログなど、一次処理したデータを研究者コミュニティに公開してきた。講演ではこれまでの取り組みや、数値計算アルゴリズムの詳細、そしてスーパーコンピュータ「富岳」での展望を紹介する。
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第53回 "中性子星と超流動---軌道とスピンの協奏による核子超流動の多様性---"
講演者:安井 繁宏 氏(慶應義塾大学)
日程:2022年2月19日(土) 14:00ー15:30
場所:Webex(オンライン)
<<要旨>>
中性子星は宇宙のなかでもっとも高密度な極限物質である。中性子星の内部は核子だけでできているような核物質が大半を占めており、物質の究極的な姿を見ることができると考えられている。本セミナーでは中性子星に存在すると考えられている中性子物質のP波超流動を議論する。P波超流動は二つのフェルミオンがP波クーパー対の形成によって凝縮をおこした量子的状態であり、核力の特性である強いLS相互作用 (L:軌道角運動量, S:スピン) によって多様な超流動相 (UN相, BN相, FM相など) が現れることを示す。とくに臨界温度の近傍の有効理論であるギンツブルグ-ランダウ理論による講演者の結果を紹介して、これまで知られていなかった新しい物質相が中性子星に存在する可能性を示す。
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第52回 "トランケイテッド・オーバーラップフェルミオンの極限評価"
講演者:若山 将征 氏(千葉工業大学)
日程:2021年10月23日(土) 14:00ー15:30
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
量子色力学(QCD)に基づく第一原理計算である格子QCDでは、フェルミオンを記述する際に、ウィルソン・フェルミオン(Wilson Fermion: WF)作用が広く使用されている。しかし、WF作用はカイラル対称性を陽に破るため、例えばパイ中間子のような、カイラル対称性の自発的破れに密接に関わる物理を議論するには不向きである。一方、トランケイテッド・オーバーラップフェルミオン(Truncated Overlap Fermion: TOF)作用は、WF作用を基に仮想の5次元方向の格子サイズ(N_5)を導入することで、N_5が無限大の極限で、カイラル対称性を格子上に拡張された格子カイラル対称性を厳密に満たすように構成されている。しかし、TOF作用の計算コストはWF作用と比較しておよそN_5の2乗のオーダーであるため、大きいN_5での計算は困難である。本講演では、TOF作用の紹介からはじめ、TOF作用から得られたパイ中間子等の質量について、N_5が無限大の極限および、クォーク質量がゼロになるカイラル極限への外挿評価を行なった結果[1]まで紹介したい。
[1] Y. Murakami, M. Sekiguchi, H. Wada and M. Wakayama, J. Phys. Commun. 5, 085009 (2021).
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第51回 "粒子シミュレーションと粒子シミュレータ開発フレームワークFDPS"
講演者:岩澤 全規 氏(松江工業高等専門学校)
日程:2021年7月17日(土) 13:30ー15:00
場所:Webex(オンライン)
<<要旨>>
数値シミュレーション手法は大きく、メッシュ法と粒子法に分けられる。粒子法では、対象とする系を粒子の集団として表現し、支配方程式に従って粒子が移動するため、密度コントラストの強い系や、空隙のある系、衝突や破壊のシミュレーションに強く、天文学や物理学、工学等の分野で幅広く使われている。しかし、一般に粒子法の計算量は大きく、特にクーロン力や重力などの遠距離力の場合では、相互作用の計算量は粒子数の自乗に比例する。そこで、この様な系のシミュレーションでは、粒子をツリー構造によって管理し、粒子が作るポテンシャル場を多重極展開で表現する事で高速に相互作用計算を行うBarnes-Hut
tree法(BH tree)が広く使われている。
本講演では、BH tree法を紹介し、また神戸大学、理化学研究所と共同で開発しているBH
tree法をベースとした並列粒子シミュレーションコード開発フレームワーク(FDPS: Framework for Developing
Particle Simulators)も紹介する。
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第50回 "Oscillating 4-Polytopal Universe in Regge Calculus"
講演者:津田 廉 氏(千葉工大)
日程:2021年5月8日(土) 13:30ー15:00
場所:Webex(オンライン)
<<要旨>>
正の宇宙定数を持つ閉じたフリードマン・ルメートル・ロバートソン・ウォーカー(FLRW)宇宙を離散化した模型に対して、Regge calculus を用いた解析を行った。 Regge calculus とは一般相対性理論を区分的に線形な多様体に適用した理論であり、 「長さ」と「角度」という2つの幾何学的な量のみで定式化されたその理論は、座標を用いない重力の議論を可能とする。 離散化された FLRW 宇宙は、そのスケールファクターが有限の周期と振幅で振動するという、連続模型には見られない特性を示す。 また、空間の分割を微細にするほど振動の周期と振幅は大きくなり、連続的な極限では一般相対性理論から得られる FLRW 宇宙の振る舞いを再現すると考えられる。 しかし、通常の Regge calculus でその極限を求めることは不可能であった。 Regge calculus を定式化する作用は空間の分割を微細にするほど多項式として複雑化し、 連続的な極限では作用に無限個の項が現れてしまう。 この困難を回避するため、我々は pseudo-regular polytope 模型の提案を行った。 この模型は frequency と呼ばれる分割の精度を表すパラメータを含んでおり、 frequency が無限大の極限では連続的な模型が再現されると期待される。 その極限は解析的に求めることが可能であり、実際に Regge calculus から得られる運動方程式はフリードマン方程式に帰着することが示される。
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第49回 "密度汎関数理論入門"
講演者:内藤 智也 氏(東大/理研)
日程:2020年12月12日(土) 13:30ー15:00
場所:Webex(オンライン)
<<要旨>>
量子多体問題の微視的な計算手法のひとつとして, 密度汎関数理論があり, 分子や固体の電子状態, 原子核構造の計算などで広く用いられている. 本セミナーでは, 密度汎関数理論について基本的な知識から, 近年我々が取り組んでいる, エネルギー密度汎関数の微視的導出 [1] や逆問題を用いた導出 [2], 超重元素電子状態への応用 [3], 原子核構造計算における電磁気力の寄与の高精度計算 [4] まで紹介する.
参考文献:
[1] T. Yokota and T. Naito. Phys. Rev. B 99, 115106 (2019), T. Yokota and T. Naito. arXiv: 2010.07172 [cond-mat.str-el]
[2] T. Naito, D. Ohashi, and H. Liang. J. Phys. B 52, 245003 (2019)
[3] T. Naito, R. Akashi, H. Liang, and S. Tsuneyuki. J. Phys. B 53, 215002 (2020)
[4] T. Naito, R. Akashi, and H. Liang. Phys. Rev. C 97, 044319 (2018), T. Naito, X. Roca-Maza, G. Colò, and H. Liang. Phys. Rev. C 99, 024309 (2019), T. Naito, X. Roca-Maza, G. Colò, and H. Liang. Phys. Rev. C 101, 064311 (2020)
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第48回 "Systematic study on the quark-hadron mixed phase in compact stars"
講演者:Cheng-Jun Xia 氏(浙江大学/JAEA)
日程:2020年3月19日(木) 10:30ー12:00 *注: いつもと時間が異なります
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
We investigate systematically the possible hadron-quark deconfinement phase transition in dense stellar matter, and its influence on compact star structures. The properties of quark matter are determined by equivparticle model, perturbation model, and Nambu-Jona-Lasinio (NJL) model. For hadronic matter, we adopt 10 different EoSs predicted by relativistic-mean-field (RMF) model and cluster variational method using realistic baryon interactions. Among them, 2 EoSs include the contributions of $\Lambda$-hyperons explicitly. The energy contribution due to the quark-hadron interface is treated with a surface tension $\Sigma$, where we have adopted 7 different values predicted by various methods. The two sets of EoSs are then used to construct the quark-hadron mixed phase (MP), where we have considered a continuous dimensionality to account for more complicated cases beyond the typical geometrical structures. The interface effects, the structures of MP, and the uncertainties in both hadronic and quark EoSs are examined and constrained according to pulsar observations.
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第47回 "演習 カーネル法"
講演者:瀬戸 道生 氏(防衛大学校)
日程:2019年12月7日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
機械学習界隈で話題のカーネル法を数学の立場から解説します。数学の立場とは言っても難しいことは何もなく、カーネル法の基本的なアイデアを理解するには理工系学部2年次程度の数学(線型代数、微分積分、複素関数論)の基本的な知識があれば十分です。
特に、今回は数学の演習としてカーネル法を解説することを試みます。カーネル法ユーザーの方には、なかなか勉強する時間はとれないけど、一度聞いておけば安心する話
(カーネル関数の構成法、リプレゼンター定理の使い方など)を提供します。
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第46回 "Thermal Evolution of Isolated Neutron Star and the Influence of Equation of State"
講演者:土肥 明 氏(九州大学)
日程:2019年11月9日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
Isolated neutron stars (INS) formed after supernova explosion cool down by mainly neutrino loss. The time variation of surface temperature, that is a cooling curve, is affected by many parameters such as equation of state (EoS), superfluid model, surface composition of INS envelop, and so on. For example, EoS gives information about the compositions in neutron stars and this may make neutron stars cool rapidly. In this talk, I will give an explanation of the influence of these uncertain parameters, above all EoS, on cooling curves. Although many EoSs have been constructed by using unrealistic nuclear potentials, the new EoS based on realistic potentials has been developed recently. I describe the consistency of the new EoS with observations including the surface temperature of INS and the relation between EoS and rapid cooling.
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第45回 "機械学習用のソフトウェアフレームワークの紹介"
講演者:ブリズガロフ・ピョートル 氏(千葉工業大学 人工知能・ソフトウェア技術研究センター)
日程:2019年6月15日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
機械学習には、大規模のデータセットや複雑な学習アルゴリズムが使われているため、高性能計算が必要です。学習の高速化にGPUが広く使われており、効率的にGPUを活用するため数多くのソフトウェアフレームワークやツールなどが存在しています。
本講演では、その中から、画像認識などに使われている畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を中心に、いくつかの機械学習用のフレームワークを紹介し、その使い方、そして、アーキテクチャや性能と高速化について話します。
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第44回 "CUDAを用いた数値解析の高速化"
講演者:富永 浩文 氏(千葉工業大学)
日程:2019年2月15日(金) 13:30ー15:00 *注: いつもと曜日が異なります
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
本公演では、これからGPUコンピューティングを始めようとする人を対象にGPUプログラミングの統合開発環境のひとつであるCUDAを用いた基礎的なプログラミング技法を紹介する。GPUは、画像処理向けに開発されたプロセッサであり、行列演算を高速に解くことに特化している。このため、数値計算とも相性がよく比較的簡単に数値計算などのプログラムを並列化することができる。また、GPUのアーキテクチャの構造を理解することで、さらなる高速化を実現することが可能となる。単純な数値計算である差分法による熱伝導問題を題材として、CUDAプログラミングのプログラミング方法と最適化方法について解説する。
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第43回 "謎多き星イータカリーナはどのように形成されたのか"
講演者:平井 遼介 氏(オックスフォード大学)
日程:2018年12月22日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
イータカリーナは高光度青色変光星と呼ばれる星の一つであるが、その中でも特異な天体である。1837年に一度大きな爆発を起こした後、約100年に渡って何度も増光と減光を示した。そして、現在は中心の星の周りに雪だるまのような形の星雲が取り巻いている。またイータカリーナには5年周期で公転する伴星の存在も知られている。従来の恒星進化理論ではこのような特異な性質をもつ星を形成することはできていない。そのため多くの特殊な形成シナリオが提案されているが、全ての観測的特徴を統一的に満たす理論は確立されていない。本発表では中でも恒星合体シナリオに注目し、観測との整合性を探る。我々が開発した新たな数値計算スキームを用いた流体シミュレーションなどを通じて謎多き星イータカリーナの過去・現在・未来に迫る。
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第42回 "Time-Dependent Density Functional Theory for Superfluid Dynamics in the Neutron Star Crust"
講演者:関澤 一之 氏(新潟大学)
日程:2018年11月24日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
Superfluidity is one of the fundamental properties of Neutron Star Matter. For instance, the so-called neutron star "glitch," a sudden change of the rotational frequency, has been considered to be related to dynamics of a huge number of vortices of superfluid neutrons in the inner crust of the neutron star. Although many macroscopic models have been developed so far, precise values of model parameters, like vortex-nucleus interaction, vortex tension, effective mass of nuclear impurities, and so on, are not at all obvious. An important mission for nuclear physicists is to derive such physical ingredients of macroscopic models from microscopic many-body theories taking full account of the nucleonic degrees of freedom. The most sophisticated description to date can be achieved by a local formulation of superfluid Time-Dependent Density Functional Theory (TDDFT), which we call TDSLDA (Time-Dependent Superfluid Local Density Approximation). In this seminar, I will explain the theoretical framework of TDSLDA and present our recent studies of superfluid dynamics in the neutron star crust, e.g., couplings between nuclear impurities and the neutron superfluid medium or vortices, achieved with state-of-the-art computational tools and top-tier supercomputers.
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第41回 "2次元O(3)シグマ模型における異常次元の非摂動的評価"
講演者:佐々木 潔 氏(日本工業大学・千葉工業大学)
日程:2018年6月23日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
80年代後半から90年代初頭にかけて、有限体積における系の情報から、無限体積での情報を取り出す方法が開発された。上記の研究により、二粒子系の散乱位相差や、結合定数のrunningを評価する事が可能となり、現在、格子QCDの数値計算において、精力的に研究が行われる分野に発展している。講演者の現在の興味は、N点関数などに関して、サイズ依存性を記述する繰り込み群方程式を確立する事にある。そのための第一歩として、2次元O(3)シグマ模型を研究対象に選び、その繰り込み群方程式に現れると考えられるベータ関数と異常次元の評価をモンテカルロ計算と摂動的手法の両面から行った。本講演では、多くの聴衆が、このトピックスに不慣れである事を想定して、有限体積での基本的な事柄に関するレビューを行い、その後、講演者の最近の研究について講演を行う。
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第40回 "非線形量子電気力学に基づく真空の性質とそのX線偏光観測への応用"
講演者:矢田部 彰宏 氏(早稲田大学)
日程:2018年5月19日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
非線形量子電気力学(非線形QED)は極めて強い電磁場のもとでの光子と電子の振る舞いを記述する理論である。これに基づくと例えば電磁場中では真空偏極と呼ばれる過程によって真空が誘電的な異方性をもち、そこを通過する電磁波の屈折率が偏光によって異なる複屈折性を示すことが予想されている。発表者は今までの研究において、非線形QEDが重要になる高強度レーザー実験や中性子星のX線偏光観測における真空偏極の効果に注目してきた。前者に関してはレーザーの作る電磁場は一定一様でなく変化しているが、その効果はほとんど考えられていなかったので、電磁波の変化による屈折率の変化を定量的に評価した。その結果、屈折率の虚部に大きな影響を与えることがわかった。また、後者では中性子星の表面に大気が存在するとvacuum resonanceと呼ばれる現象に伴い偏光が大きく変わることがあることに注目し、観測される偏光を系統的に求めた。その結果、マグネターのような強磁場中性子星は強く偏光した放射が期待されるが、偏光が大きく変わるのは10^13ガウス程度までの極端には磁場が強くない中性子星の場合であることがわかった。
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第39回 "脳における機能的結合と神経活動のゆらぎの機能性について -スパイキングニューラルネットワークによるシミュレーションと脳波解析によるアプローチの紹介- "
講演者:信川 創 氏(千葉工業大学)
日程:2018年2月27日(火) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
近年の確率共鳴理論に基づいた神経ネットワークの研究により,神経活動の適度な強度のゆらぎが脳機能を促進させることが明らかとなっている.特に,脳機能画像法による研究から,脳におけるゆらぎは認知機能や加齢,精神疾患を反映していることが報告されている.本セミナーでは,著者らがこれまでに実施してきた,自閉症と統合失調症における機能的結合の変質についての研究について紹介する.また,著者らのスパイキングニューラルネットワークによるシミュレーションによる研究の紹介として,まず,小脳運動学習におけるカオス共鳴現象に関して説明を行う.次に現在進めている大脳皮質系の神経ネットワークの構造的複雑性と神経活動の複雑性の関連について発表する.
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第38回 "Relativistic mean-field models of hadron and quark matter in neutron stars"
講演者:Maslov Konstantin 氏(JINR)
日程:2018年1月30日(火) 13:30ー15:30
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室
<<要旨>>
We describe two recently developed phenomenological models used to
obtain the equation of state of strongly interacting hadron and quark
matter in neutron stars. The hadronic one is based on the non-linear
Walecka-type model with the coupling constants and hadron masses
dependent on the mean scalar field in the medium. We demonstrate that
this model is flexible enough to pass the majority of known
experimental constraints on the equation of state. The quark matter
model is based on the quasiparticle model formulated as a relativistic
density functional, where the effective string tension is taken into
account with the excluded volume effects. Possibility of a mixed phase
formation and existence of twin neutron star configurations are
discussed.
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第37回 "Brueckner-Hartree-Fock method for nuclear matter and neutron stars"
講演者:Hans-Josef Schulze 氏(イタリア国立核物理学研究所,INFN)
日程:2017年12月9日(土) 15:30ー16:30
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
The Brueckner-Hartree-Fock theoretical many-body approach is introduced.
The theoretical basis is outlined and applications to the computation
of the equation of state of nuclear matter and the structure of neutron
stars are illustrated.
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第36回 "機械学習による符号問題の最適化"
講演者:森 勇登 氏(京都大学)
日程:2017年11月11日(土) 15:30ー16:30
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
符号問題は複素作用によって生じる数値計算上の問題であり、量子多体系の計算においてしばしば現れる。
有限温度・密度の格子QCD計算にもこの問題は現れ、第一原理計算によるQCD相図の理解を妨げているため、未解決の重要な課題の一つと言える。
この問題を回避するための方法として近年注目されているものにLefschetz thimble上での積分とComplex Langevin法が存在するが、今回我々は新しい手法として経路最適化法を提案した[1][2]。
そこで、本セミナーではこの経路最適化法について、特に近年理論物理学において広く使われ始めている機械学習の観点から説明する。また、具体的な応用例として複素phi4模型等における計算結果を紹介する予定である。
[1] Y. Mori, K. Kashiwa and A. Ohnishi, arXiv:1705.05605 [hep-lat].
[2] Y. Mori, K. Kashiwa and A. Ohnishi, arXiv:1709.03208 [hep-lat].
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第35回 "相対論的Hartree-Fock計算計算による核物質の物性研究"
講演者:宮津 剛志 氏(東京理科大学)
日程:2017年10月28日(土) 15:30ー16:30 *注: 時間が変わります
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
陽子や中性子を原子核に束縛する核力(強い力)理論をもとに、80年以上もの長い間にわたり、原子核や核物質の物性は現在でも盛んに研究され続けています。一方、近年では科学技術の向上による高精度天体観測などから、地上では実現不可能な極限状態における物理現象に関する情報を得ることが可能となりつつあります。
これまでの原子核研究は、主に非相対論枠組みに基づく計算で行われてきましたが、超巨大原子核とみなしうる中性子星などを想定した高密度核物質を研究する場合には、相対論的効果を考慮する必要があります。
今回のセミナーでは、相対論的枠組みの中で場の理論による核子多体計算(HartreeからHartree-Fock 近似)がどのように定式化されているかにフォーカスし、具体的な計算手法を説明します。応用として、相対論的Hartree-Fock計算を通常核子密度付近の核物質から中性子星物質に適応した計算結果を紹介したいと考えています。
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第34回 "CFT approach to multi-channel SU(N) Kondo effect"
講演者:尾崎 翔 氏(慶応義塾大学)
日程:2017年7月8日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F大会議室 *注: いつもと場所が異なります
<<要旨>>
In this seminar, I will talk about our recent analysis of the general multi-channel SU(N) Kondo effect from the conformal field theory (CFT) approach. The Kondo effect is a well known phenomenon in condensed matter physics as an enhancement of the electrical resistivity of impure metals with a decreasing temperature. Below the Kondo temperature, the scattering amplitude between a conduction electron near the Fermi surface and the impurity diverges owing to asymptotic freedom of the Kondo effect, and thus perturbative approaches breaks down. In order to investigate the Kondo effect in the IR region below the Kondo temperature, we have to rely on some non-perturbative method. By using the CFT approach as a non-perturbative method, we successfully determine the IR behavior of several observables of multi-channel SU(N) Kondo effect, including the impurity entropy, specific heat, susceptibility and the Wilson ratio. I will also discuss an application of our method to QCD Kondo effect which is recently proposed in high energy physics.
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第33回 "Expanding Polyhedral Universe in Regge Calculus"
講演者:津田 廉 氏(茨城大学)
日程:2017年6月24日(土) 10:00ー11:30 *注: いつもと時間が異なります。
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
Regge Calculus はEinstein重力を格子状に離散化された多様体に適用した理論である.この理論では多様体は有限体積の平坦な胞である「ブロック」の集まりとして近似される.すべてのブロックの辺の長さを指定することは,多様体の形状を指定することに等しい.各ブロックの形状を変化させることで多様体のダイナミクスを表現しようというのがRegge Calculus のエッセンスである.
本セミナーでは初めにRegge CalculusにおけるHilbert作用がどのような形で与えられるかを紹介する.それはRegge作用と呼ばれており,「長さ」と「角度」という2つの幾何学的な量のみで書くことができる.Regge Calculusでは座標を用いずに重力を議論することが可能であり,一般座標変換不変性を内包した理論になっている.
次に,2+1次元のFLRW宇宙を題材にしたRegge Calculus模型について議論を行う.3+1次元の場合,FLRW宇宙を扱ったRegge Calculusの先行研究にCollinsとWilliamsによる正多胞体宇宙模型がある.今回我々は彼らの手法を2+1次元に適用し,正多面体宇宙の振る舞いを調べた.さらに,正多面体から一般の多面体に拡張するための修正案を提示するとともに,パラメータの適切な極限をとることでRegge Calculusから連続理論のFLRW宇宙が再現されることを示す.
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第32回 "超流動体における対称性の破れとトポロジー"
講演者:水島 健 氏(大阪大学)
日程:2017年3月7日(火) 13:30ー15:00 *注: いつもと曜日が異なります
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
3Heから中性子星まで
要旨:近年、トポロジーを基軸とした新たな物質観が広がりをみせている。もともと量子ホール系など「対称性の破れ」で説明できない量子相を説明してきたが、現在では、対称性の破れによって生じる量子現象の好例である超伝導・超流動相にもこの概念は適用され、マヨラナ粒子のようなトポロジカル準粒子が物質の新しい機能性をもたらすと期待されている。本講演では、最も対称性の高い超流体である液体3Heを中心に、対称性の破れやトポロジカル構造の発現に関する最近の話題を紹介する。具体的には、(1) 対称性の自発的破れとトポロジカル相転移が同時に起こる量子臨界現象、(2)フェルミ励起とボース励起の質量ギャップに関する南部関係式、(3)重い電子系超伝導物質や中性子星内部におけるトポロジカル量子現象などについて議論する。
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第31回 "2次元整数格子上のランダムウォークの局所時間と対応するガウス自由場の関係性について"
講演者:岡田 いず海 氏(東京工業大学)
日程:2017年1月28日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス5号館1F 5109教室 *注: いつもと場所が異なります
<<要旨>>
本講演では、2次元 (整数格子上) の単純ランダムウォークの local time (各頂点への訪問回数)と対応するガウス自由場に関する極限定理を扱う。特に、これまで2次元の favorite point (単純ランダムウォークの local time が他点と比べて極端に大きい点) と high point (ガウス自由場の値が他点と比べて極端に大きい点) という特異点に対して研究を進めてきた。これらの特異点は、近年この分野の第一人者である A.Dembo, Y.Peres, O.Zeitouni, J.Rosen 氏らによって、 local time の汎関数の極限定理と密接な関係を持つことが示されている。時間が許せば、現在注目されている関連の問題についても紹介するつもりである。
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第30回 "AGT対応: 入門から最近の進展まで"
講演者:瀧 雅人 氏(理研)
日程:2016年10月22日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
AGT対応は広範な二次元共形場理論と四次元ゲージ理論を結びつける、新種のデュアリティーです。その背後には豊かな数理構造が隠れているために、物理学と数学の両方面から注目を集めています。このセミナーでは基礎的な知識の解説から初めて、具体的な計算でAGT対応を実際に確認してみます。そしてその後に最近の発展について概説します。プランは以下のようなものを予定しています:
1. 二次元共形対称性とその表現
2. 四次元インスタントンの分配関数
3. 超対称Yang-Mills理論にいするAGT対応
4. 様々な拡張と最近の進展のoverview
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第29回 "様々な天体環境下でのrプロセス元素合成とβ崩壊率がピーク生成に与える影響"
講演者:西村 信哉 氏(キール大学)
日程:2016年7月2日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
rプロセス元素合成は、爆発的な天体環境下で「速い」中性子捕獲によって鉄より重い元素を作る過程である。この過程は、金やウランなどの起源であり、銀河の化学進化において重要なものの一つであるが、大きく次の3つの点が未解明である。すなわち、(1)起源である天体、(2)それぞれの天体現象での生成過程、(3)関係する核反応や原子核そのものの性質が実験的に決められていない。これらは他の元素過程と比べても際立った特徴で、rプロセスは元素合成の中でも特に「謎」が多い研究対象である。
本講演では、まず最近の天体理論の進展に触れ、候補天体現象である中性子星連星合体や超新星爆発に関して簡単にまとめる。その上で、rプロセス元素合成のシミュレーションに基づいて、原子核物理、等にβ崩壊に起因する不定性が元素の生成過程にどのような影響を及ばすかを議論する。特に、β崩壊の理論の不定性が、様々な現実的な天体環境でどのようなインパクトを持つのかを調べた我々の研究[1]の内容を紹介する。最新のQRPAに基づいた理論計算ではβ崩壊が速く進み、同時にrプロセスの進行も速くなることがわかった。これは基本的にはどのような天体環境でも定性的には成り立つ。質量数が200程度の重い中性子過剰核はβ崩壊の実験値がなく、今は理論に頼るしかないが、一部に関しては近い将来の測定が計画されている。我々の研究は実験によって崩壊率が決まった時のインパクトを予想しているとも考えられる。
[1] N. Nishimura, Zs. Podolyak, D.-L. Fang, T. Suzuki, Phys. Lett. B 756 (2016)
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第28回 "モンテカルロ殻模型による大規模原子核構造計算"
講演者:清水 則孝 氏(東京大学大学院理学系研究科 附属原子核科学研究センター)
日程:2016年6月4日(土) 10:00ー11:30
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
原子核殻模型計算は量子化学における配置間相互作用(CI)法に相当し、原子核の構造を微視的に求める有力な量子多体計算手法の一つである。しかしながら、この手法をそのまま中重核領域に適用しようとすると、対角化すべきハミルトニアン行列の次元が莫大となるため、ランチョス法による旧来型計算手法では計算不可能となる。この問題を克服し、殻模型計算の適応領域を大きく広げるため、我々は「モンテカルロ殻模型」という計算の枠組みを提唱し発展させてきた。特に、この枠組みに導入されたエネルギー分散期待値による外挿は、10の14乗次元を超えるような巨大なハミルトニアン行列のエネルギー固有値を、精密に推定することを可能とした。この計算手法を解説すると共に、核構造計算への応用例を紹介する。
N. Shimizu, T. Abe, Y. Tsunoda, Y. Utsuno, T. Yoshida, T. Mizusaki, M.
Honma, and T. Otsuka, Prog. Theor. Exp. Phys. 2012, 01A205 (2012).
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第27回 "ブレーンワールドにおけるブラックホールの存在と安定性の解析へ向けて"(論文投稿前につき非公開)
講演者:大川 博督 氏(京都大学/早稲田大学) *注: いつもと曜日が異なります。
日程:2016年2月26日(金) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
現在までの観測は、我々の時空が4(3+1)次元であることと無矛盾である。 超弦理論など高次元時空の存在を示唆する理論にとって、余剰次元の観測は重要な役割をする。 カルツァ・クライン理論における余剰次元の大きさは現在の観測にかからないほど小さいが、ランドール・サンドラムによるブレーンワールドモデル、 つまり我々の4次元時空の重力以外の相互作用が高次元時空の内部に埋め込まれているモデルでは、大きな余剰次元を持つ可能性がある。 しかし、そもそもこのブレーンワールドが我々の時空を表現するためには安定なブラックホール解の存在も議論する必要があるが、 そのような解が存在し安定であるかどうかはその非線形性のため詳しく解析されていない。 本発表では、近年までのその分野の先行研究と数値相対論を用いた我々の手法を用いたアプローチについて議論したい。
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第26回 "重・超重核領域における原子核の崩壊様式の理論研究及びr過程元素合成への応用"
講演者:小浦 寛之 氏(日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター)
日程:2016年1月23日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
我々の身の回りにある元素は宇宙の始まりからあったわけではなく、ビッグバン直後はリチウム程度まで作られ、その後に星の進化の過程とともにウランまでが作られたと考えられている。これら元素を作る過程は原子核の合成過程であり、原子核の性質がその過程に大きく寄与する。 本セミナーでは原子核の核図表における大域的な性質を、講演者が開発した原子核質量模型を中心に述べ、特に中性子過剰核側の魔法数変化の性質や超重核領域での核構造及び崩壊様式について議論する。そしてこれらが速中性子捕獲過程(r過程)においてどのような影響を持つのか、特に核分裂とr過程との関係について、幾つかの計算を例にとり議論する。
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第25回 "磁気冷凍性能を最大限引き出せる手法の開発"
講演者:田村 亮 氏(物質・材料研究機構)
日程:2015年11月28日(土) 15:00ー16:00 *注: いつもと時間が異なります。
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
磁気冷凍は,磁性体における磁気熱量効果を用いた冷凍技術である.磁気冷凍は,気体冷凍技術が抱える環境問題や騒音問題を解決できると期待されており,次世代冷凍技術として開発が急がれている.等温過程で磁性体に磁場を印加する事により,磁性体中の磁気エントロピーが変化する.この磁気エントロピー変化を熱に変換する(磁気熱量効果)ことによって冷却を行う.高効率磁気冷凍を目指すため,巨大磁気エントロピー変化を示す磁性体,特に強磁性体の探求が行われてきた.一方で,磁気冷凍機への応用の観点から,最大磁気エントロピー変化が得られる温度が異なる複数の磁性体が必要でとなる[1].そのため,強磁性体だけでなく,様々な磁気構造を示す磁性体の磁気熱量効果も測定されてきた[2].しかしながら,磁気熱量効果が磁気秩序構造の変化にどのように依存するか,理論的観点からの研究は未開拓であった.そこで我々は,典型的な磁気構造である,強磁性,及びA,C,G 型反強磁性構造を秩序構造とする磁性体について,等温過程における磁気エントロピー変化の温度依存性をWang-Landau法を用いた大規模数値計算によって理論的に検討した.その結果,強磁性体と反強磁性体では明確な違いがある事を確認した.そして,反強磁性体の磁気エントロピー変化を最大にする磁場印加手法を提案した[3,4].この提案した磁場印加手法は,反強磁性体だけでなくあらゆる磁性体の磁気冷凍性能を最大限引き出す手法である.
本研究は,北澤英明博士(物質・材料研究機構),大野隆央博士(物質・材料研究機構),及び田中宗博士(早稲田大学)との共同研究である.
[1] T. Numazawa, K. Kamiya, T. Utaki, and K. Matsumoto, Cryogenics 62, 185 (2014).
[2] S. Toyoizumi, H. Kitazawa, Y. Kawamura, H. Mamiya, N. Terada, R. Tamura, A. Donni, K. Morita, and A. Tamaki, J. Appl. Phys. 117, 17D101 (2015).
[3] R. Tamura, T. Ohno, and H. Kitazawa, Appl. Phys. Lett. 104, 052415 (2014).
[4] R. Tamura, S. Tanaka, T. Ohno, and H. Kitazawa, J. Appl. Phys. 116, 053908 (2014).
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第24回 "ハイパー核の不純物効果とハイペロン・プローブで探る原子核構造研究"
講演者:井坂 正裕 氏(理化学研究所)
日程:2015年10月24日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
Λ粒子等のハイペロンは、短寿命ながら原子核に束縛させることが可能であり、ハイペロンが加わった原子核はハイパー核と呼ばれている。ハイパー核物理では、1)“ハイペロンを含むバリオン間相互作用の理解”と2)“ハイペロンを含むバリオン多体系の性質理解”が大きな目的であり、これまで(Λ粒子が核に加わった)Λハイパー核の研究が中心的になされてきた。2)に関して、Λ粒子等のハイペロンは核子からのパウリ原理を受けないため、核に加わること核構造の変化(不純物効果)をもたらす。こうした不純物効果の研究は、これまで、Li等の比較的質量数の小さなハイパー核で議論され、核の(分子的な)クラスター構造の変化が明らかにされてきた。今後、J-PARCの本格稼働や米国ジェファーソン研究所(JLab)等での実験によってハイパー核の実験情報が飛躍的に増大することで、より質量数の大きな核も対象として、ハイペロンのもたらす不純物効果が明らかになると期待される。特に、質量数10-40程度のp-sd殻領域では基底・低励起状態にクラスターや変形した平均場など多種多様な構造を持つため、それにΛ粒子が加わることで様々な構造変化が起こると期待される。本講演では、反対称化分子動力学(AMD)計算に基づき、BeやNe等p-sd殻Λハイパー核における不純物効果の具体例を示すと共に、Λ粒子をプローブとした核構造研究の可能性について議論する。
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第23回 "Dense quark matter and compact stars"
講演者:Huan Chen 氏(China University of Geoscience)
日程:2015年10月9日(金) 18:00ー19:00 *注: いつもと曜日•時間が異なります。
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
We develop a quark model to study cold dense quark matter. It is based
on the Dyson-Schwinger equations of quark propagator with various
ansatz of quark-gluon vertex and a chemical potential dependent gluon
propagator model. Combined with hadronic equation of state from
Brueckner-Bethe-Goldstone theory, we studied the hadron-quark phase
transition in neutron stars and found the EOS, and consequently the
structure of hybrid quark stars, depend on a global effect of the quark
gluon vertex and the gluon propagator. With extended parameter space,
we also study the possibility of stable strange quark matter and strange
quark stars. The maximum mass of hybrid quark stars could be larger
than 2-solar- mass, while that of the strange quark stars is smaller.
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第22回 "量子アニーリングを用いたクラスタ分析"
講演者:田中 宗 氏(早稲田大学高等研究所)
日程:2015年7月25日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
2011年5月「世界初の商用量子コンピュータ」D-Wave が、D-Wave Systems Inc. より発表された[1]。D-Wave は量子アニーリングと呼ばれる量子計算技術を採用した量子計算デバイスである。量子アニーリングは、1998年に門脇、西森によって理論提案がなされた日本発の計算技術である[2]。量子アニーリングは、量子揺らぎに駆動された自己組織化現象を用いた計算技術と考えることもできる方法である。物理現象を積極的に活かした計算手法であり、物理学と情報科学の境界領域に位置づけられる研究の一例である。
量子アニーリングは、組合せ最適化問題に対する最適解を効率良く得ることが期待されている汎用的な計算技術である。組合せ最適化問題は、最適解を得ることが難しい問題とされている。適用範囲は極めて広範に渡っている。一例として、化学物質の安定構造探索や、集積回路網や通信回路網の最適設計などがある。また機械学習の抱える課題の一つとして、最適化問題を解くということが挙げられる。これらのことから、組合せ最適化問題を効率よく得る計算技術の開発が強く求められている。
我々は2009年から量子アニーリングの本格的活用を視野に入れた研究として、機械学習の一手法であるクラスタ分析に対する量子アニーリングの有用性を検討してきた[3-7]。クラスタ分析とは、膨大なデータを潜在的意味によって分類する方法である。我々は、論文データベースなどの実データを用いた本格的な数値実験を行った。量子モンテカルロ法を用いた擬似シミュレーションの結果、従来の手法であるシミュレーテッドアニーリングに比べ、量子アニーリングが有用であることを示唆する結果を得た。
本講演ではまず、量子アニーリングの基礎の紹介を行う[8,9]。ここでは量子アニーリングの原理に加え、D-Wave の内部構造に関する解説を行う。D-Wave の内部構造の説明を通じ、量子アニーリングの実験的実装法の概観を行う。D-Wave の内部構造は、超伝導エレクトロニクスのこれまでの蓄積[10,11]が活用されている。次に、我々の研究である、量子アニーリングを用いたクラスタ分析について紹介する。最後に時間の許す限り、量子アニーリングをはじめとしたイジングモデル型量子情報処理に関する研究の今後の展開に関して述べる。
本講演で発表する内容の一部は、佐藤一誠博士(東京大学情報基盤センター、さきがけ研究員)、栗原賢一博士(グーグル株式会社)、中川裕志教授(東京大学情報基盤センター)、宮下精二教授(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻)との共同研究である。
[1] D-Wave Systems Inc. website, http://www.dwavesys.com/
[2] T. Kadowaki and H. Nishimori, Phys. Rev. E, Vol. 58, p. 5355 (1998).
[3] K. Kurihara, S. Tanaka, and S. Miyashita, Proceedings of the 25th Conference on Uncertainty in Artificial Intelligence (UAI2009).
[4] I. Sato, K. Kurihara, S. Tanaka, H. Nakagawa, and S. Miyashita, Proceedings of the 25th Conference on Uncertainty in Artificial Intelligence (UAI2009).
[5] I. Sato, S. Tanaka, K. Kurihara, S. Miyashita, and H. Nakagawa, Neurocomputing, Vol. 121, p. 523 (2013).
[6] http://www.shutanaka.com/papers_files/ShuTanaka_DEXSMI_10.pdf
[7] 次のサイトの slideshare に幾つかのプレゼンテーション形式ファイルを掲載しています http://www.shutanaka.com/study.html
[8] 西森秀稔教授(東京工業大学)の次のwebサイト http://www.stat.phys.titech.ac.jp/~nishimori/QA/q-annealing.html
[9] S. Tanaka and R. Tamura, "Quantum Annealing from the Viewpoint of Statistical Physics, Condensed Matter Physics, and Computational Physics" in "Lectures on Quantum Computing, Thermodynamics and Statistical Physics", (World Scientific, 2012) [プレプリントは、arXiv:1204.2907 にあります].
[10] Y. Nakamura, Y. A. Pashkin, J. S. Tsai, Nature, Vol. 398, p. 786 (1999).
[11] M. Hosoya, W. Hioe, J. Casas, R. Kamikawai, Y. Harada, Y. Wada, H. Nakane, R. Suda, and E. Goto, Applied Superconductivity, IEEE Transactions, Vol. 1, p. 77 (1991).
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第21回 "天体重爆撃と初期惑星進化: 状態方程式の重要性"(論文投稿前につき非公開)
講演者:黒澤 耕介 氏(千葉工大, 惑星探査)
日程:2015年6月13日(土) 13:30ー15:00
場所:千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
太陽系の固体惑星/衛星表面を支配する地形は衝突クレータである.
これらのクレータは太陽系天体が衝突を繰り返して成長してきたことを
物語る. 形成末期の火星, 地球への衝突速度は5-20 km/sに達し, 固体岩石
惑星の主要構成成分である珪酸塩ですらも熔融/蒸発させるエネルギーを
供給する. 本セミナーでは天体衝突現象が熱力学によってどのように記述
されるか, 特に衝突で生成されるエントロピー上昇量の重要性を解説する.
筆者らが進めている大阪大学レーザーエネルギー学センターで実施している
天体衝突の模擬実験によるエントロピー上昇の決定の取り組みを紹介し,
得られた結果を地球, 火星の初期進化へ応用する展望を述べる.
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第20回 "QCD相構造研究における虚数化学ポテンシャルの有用性について"
講演者: 柏 浩司 氏(京大)
日程: 2015年3月26日(木)13:30ー15:30(←いつもと曜日が違います。)
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
量子色力学(QCD)の有限温度・実数化学ポテンシャル領域での相構造は、
初期宇宙や重イオン加速器実験、中性子星の内部構造に密接に関係する。
そのQCD相構造研究における大問題は、負符号問題により有限実数化学ポテンシャルにおいて、
第一原理計算である格子QCD計算を厳密に実行できない点である。
そこで、この問題を避けるために提案された虚数化学ポテンシャルを利用したQCD相構造の研究を紹介する。
また、非閉じ込め相転移の擬臨界温度について、虚数化学ポテンシャルがフェルミオン境界条件やAharonov-Bohm phaseとみなせることを利用した研究についても議論する予定である。
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第19回 "NJL模型を用いたテンサー型スピン偏極とカイラル対称性の研究"
講演者: 丸山 智幸 氏(日大)
日程: 2015年2月27日(金)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
これまでスピン偏極物質の研究では軸性ベクトル型の相互作用が用いられ、カイラル対称性の回復とともに、質量がゼロとなり、スピン偏極が消滅していた。これに対してテンサー型で、質量ゼロでもスピン偏極は消滅しない。我々はNJL模型を用いることで、テンソル型スピン偏極とカイラル対称性についての議論を行う。
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第18回 "トポロジカル輸送現象:物性から宇宙物理まで"
講演者: 山本 直希 氏(慶応大)
日程: 2015年2月7日(土)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
相対論的なフェルミオンのもつカイラリティの性質によって引き起こる新奇な輸送現象と、その物性・原子核・宇宙物理への応用について議論する。特に、そのような輸送現象が引き起こす新しいタイプのプラズマ不安定性(カイラルプラズマ不安定性)を紹介し、それに基づくマグネター磁場の新しいメカニズムを提案する。
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第17回 "ヤンミルズ理論の弦理論的な解釈について"
講演者: 花田 政範 氏(スタンフォード大/京大)
日程: 2014年11月8日(土)13:30ー15:30
場所: 5109 教室(←いつもと場所が違います。5号館1階 http://www.it-chiba.ac.jp/institute/campus/shibazono.html)
<<要旨>>
トフーフトによって導入されたヤンミルズ理論の弦理論的な解釈は、QCDの定性的な理解に役立つだけでなく、
ゲージ/重力対応(AdS/CFT対応)の基礎にもなっている。このトークでは、閉じ込め相についてのトフーフトの議論を
簡単に説明した後、同様の議論が非閉じ込め相にも自然に拡張できる事を示し、非閉じ込め相の性質やゲージ/重力対応を
理解するために有用な直観的な見方を提供したい。
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第16回 "精密宇宙論のイノベーション、原初磁場と宇宙背景放射"
講演者: 山崎 大 氏(千葉工大/国立天文台)
日程: 2014年11月1日(土)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
今年3月にBICEP2が、インフレーションの間接的証拠である宇宙背景放射の偏光揺らぎを検出したと発表し話題となった。この真偽に関して結論は出ず、観測中または計画中の宇宙背景放射観測に委ねられている。このように、宇宙論研究に重要な情報をもたらすと期待される精密な観測計画が、次々と進展し問題提起する中、観測結果から物理解釈を行う理論研究も、技術的な数値精度の向上、統計的信頼性、物理的な正確性が求められている。物理的正確性を向上させ、信頼性の高い理論モデルを構築するには、可能性のある物理現象を一つ一つ慎重に検証する必要がある。私は、その検証すべき対象として原初磁場に着目した。今回のセミナーでは、原初磁場を考慮した宇宙背景放射の理論研究について説明し、観測結果と理論計算の比較から統計的に原初磁場の強度と分布を制限し、原初磁場を考慮した次世代の精密宇宙論がどのように展開されるか紹介する。
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第15回 "QCD和則の基礎とその有限密度中のハドロンに対する応用"
講演者: Philipp Gubler 氏(理研)
日程: 2014年6月21日(土)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
QCD和則はこれまでに様々なハドロンの物理的な性質やその
有限温度・有限密度の物質における振る舞いの研究のために
使われてきた。最近では、QCD和則の最大エントロピーを用いた
新しい解析手法が開発され[1]、これまでの解析において用いられた
「pole + continuum」という人為的な仮定を必要としない解析が
可能となった。
本講演ではまずQCD和則の基礎的な事項を説明し、その問題点も
含めて紹介する予定である。さらには、有限密度中のハドロンに
焦点を当て、QCD和則からハドロンの有限密度物質における振る舞い
に関して何を予言することができるかについて、いくつかのハドロン
の結果を紹介しながら、議論する予定である。
[1] P. Gubler and M. Oka, Prog. Theor. Phys. 124, 995 (2010),
arXiv:1005.2459 [hep-ph].
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第14回 "光の輸送現象とその逆問題"
講演者: 町田 学 氏(ミシガン大)
日程: 2014年5月31日(土)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
雲や霧、生体組織、星間物質などのランダム媒質中を伝播する光は、線形ボルツマン方程式(輻射輸送方程式または単に輸送方程式とも呼ばれる)に従うことが知られています。この方程式は物理以外にも医学、生物、天文、地球物理、原子力工学など様々な分野で使われています。ところが基礎的なこともまだ十分に分かっていません。例えば、グリーン関数も簡単な場合にしか知られていません。本講演ではまず、昨年得られた輸送方程式のグリーン関数の解析的な表式を紹介します。さらに、これを用いて逆問題を考えます。太鼓の音を聞いてその形状が分かるか、という逆問題が有名ですが、ここでは境界で観測された散乱光から内部のランダム媒質の構造を調べます。これを医学に応用すると、X線を用いるCTスキャンと同じ要領で、光を用いて人体の内部を調べる光トモグラフィーになります。計算の詳細よりも、理論物理・応用数学にこのような分野もあるのだという紹介に重点をおく予定です。
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第13回 "汎関数繰り込み群の最近の進展と冷却原子への応用"
講演者: 谷崎 佑弥 氏(東大)
日程: 2014年5月10日(土)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
Wilsonの繰り込み群は、粗視化という操作によりミクロとマクロの物理をつなぐ手法であり、統計物理や場の量子論で広く応用されている。
このアイディアを摂動論の枠組みを超えて応用することは理論物理や数理物理の大きな課題のひとつであって、その試みのひとつとして
「汎関数繰り込み群(Functional Renormalization Group, FRG)」と呼ばれる場の理論の解析法が積極的に研究されている。
ここでは、FRGの基本的なアイディアやいくつかの最近の進展を、自らの研究結果と絡めて分かりやすく解説する。
また、FRGの具体的な応用例として冷却フェルミオン系の研究を紹介する予定である。
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第12回 "リーマン予想の紹介"
講演者: 小野寺 一浩 氏(千葉工大, 数学)
日程: 2014年2月22日(土)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
リーマン予想とは、数学における最も有名な未解決問題の一つであり、
その主張は「リーマンゼータ関数の非自明零点の実部は全て1/2である」というものである。
本講演では、まずリーマン予想の歴史的な背景(素数との関係)や
予想自体の意味(リーマンゼータ関数とは?非自明零点とは?など)について出来るだけ平易に解説し、
その後に、現在知られている成果や関連する話題を幾つか紹介する。
数学以外の分野との接点として、ランダム行列との関わりについても説明する予定である。
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第11回 "変分モンテカルロ法を用いた有機導体κ-BEDT-TTF塩の理論研究"
講演者: 渡邉 努 氏(千葉工大)
日程: 2014年1月25日(土)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
物質中では多数の電子が相互作用をすることで,様々な物性現象を生じさせている。中でも,高温超伝導や磁性現象は電子が互いに強いクーロン相互作用を及ぼしあうことで発現する量子多体現象であり,このような電子の多体系は強相関電子系と呼ばれている。一般に,強相関電子系を理論的に扱うためには,摂道計算などによる電子間相互作用に対する近似計算を用いなければならないため,これまで高温超伝導をはじめとする多くの量子多体現象の機構解明が未解決の問題として残されている。このような問題に対して,本研究では「変分モンテカルロ法」と呼ばれる非摂動的な数値シミュレーション手法を用いた解析を行っており,本講演ではこの手法を用いた研究結果を紹介する。特に,近年注目を集めている有機導体κ-BEDT-TTF塩について,この物質で観測されている超伝導・磁性状態の発現機構に関する最近の研究結果を紹介する。
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第10回 "強い場の物理とその天体物理への応用の可能性"
講演者: 板倉 数記 氏(KEK)
日程: 2013年11月2日(土)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
電場や磁場の強さが電子の静止質量の2倍(の2乗)を超えるような非常に強い場では、「非線形QED効果」と呼ばれる様々な新しい現象が起こる。典型的には、強電場からの電子・陽電子対生成(Schwinger機構)であったり、強電磁場中での実光子の伝播が変更を受け、強い異方性を持った速度の変化(真空複屈折)、磁場中での実光子が電子・陽電子へ崩壊してしまう現象、などが議論されている。本講演では、非線形QED効果についての自分の仕事を交えて最近の発展を概説し、そのような強電磁場が存在可能な宇宙での激烈現象への応用について議論をする。
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第9回 "不安定核のダイポール励起と核物質の状態方程式"
講演者: 稲倉 恒法 氏(千葉大)
日程: 2013年10月12日(土)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
実験で様々な不安定原子核が作られる様になり、不安定核に特有な性質を探索・解明する事が原子核物理の潮流の一つになっている。
中性子過剰核で見つかった低励起エネルギー領域でのダイポール励起は、不安定核に特有な集団励起モードで、中性子スキンとコアとの相対振動だと考えられている。
しかしながら、その詳しい性質はまだはっきりしていないのが現状です。本講演では、系統的計算から明らかになった不安定核の低励起ダイポールモードの性質を紹介します。
また、2倍の太陽質量も持った中性子星の発見により、核物質の状態方程式を明らかにする機運がこれまで以上に高まっている。
不安定核の性質から状態方程式に制限をかける試みが行われており、その現状なども簡単に紹介する予定です。
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第8回 "巨視的回転運動を用いたスピン依存伝導の制御"
講演者: 松尾 衛 氏(日本原子力機構)
日程: 2013年7月20日(土)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
本講演では、スピントロニクス分野外の方に向けて、非磁性体の力学回転運動を用いたスピン流生成の理論を紹介します。
最近、スピン角運動量の流れ「スピン流」を媒介とする輸送現象が注目されています[1]。これまで電磁場や磁性体の持つ角運動量をスピン角運動量の流れに変換することでスピン流の生成・制御が行われてきましたが、物体の巨視的回転運動に伴う力学的角運動量を用いたスピン流生成は行われてきませんでした。回転運動と磁性の相互作用については約100年前にアインシュタインやバーネットらによって発見されていました[2]。また、近年のナノテクノロジーの進展に伴って、ナノ磁性と回転運動の関係も調べられてきました[3]。こうした背景の下、我々の研究グループでは、回転運動を用いたスピン流生成・制御の基礎理論構築を行いました。
講演では、まず、
・スピン流の物理の基本
・力学回転と磁性の関係
・回転運動に伴う慣性力の扱い方
といった内容を確認します。
その後、回転運動に伴う力学的角運動量とスピン流の持つスピン角運動量の相互変換を調べ、
・剛体回転運動を用いたスピン流生成[4]
・表面音波によって誘起される弾性回転運動を用いたスピン流生成[5]
・物質中のバンド間遷移効果によるスピン流生成量増幅機構[6]
を議論します。
スピン流の登場する物理現象には、スピンの偏極方向、スピン依存する力の方向、
スピンの伝播する方向、印加する電磁場や回転の方向など、さまざまなベクトル
が入り乱れるため、静止画による図解には限度があります。そこで、本講演では
動画を多用し、直観的に現象を捉えていただけるように配慮します。
[1] S. Maekawa, S. O. Valenzuela, E. Saitoh, and T. Kimura, ed., "SpinCurrent", Oxford, 2012.
[2] S. J. Barnett, Phys. Rev. 6, 239 (1915); A. Einstein and W. J. de Haas, Verh. Dtsch. Phys. Ges. 17, 152 (1915).
[3] 例えば、G. Zolfagharkhani et al., Nat. Nanotechnol. 3, 720 (2008).
[4] M. Matsuo, J. Ieda, E. Saitoh, and S. Maekawa, Phys. Rev. Lett.106, 076601 (2011).
[5] M. Matsuo, J. Ieda, K. Harii, E. Saitoh, and S. Maekawa, Phys.Rev. B(R) in press.
[6] M. Matsuo, J. Ieda, and S. Maekawa, Phys. Rev. B 87, 115301 (2013).
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第7回 "重力波から探る重力崩壊型超新星のダイナミクス"
講演者: 黒田 仰生 氏(国立天文台)
日程: 2013年6月22日(土)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
太陽よりも約8倍以上重い星はその終焉に大爆発(超新星爆発)を起こすが、数十年来その爆発機構は解明されていない。爆発機構解明には数値計算が
非常に有効であるが、その際自然界の4つの全ての力、『強い力』、『弱い力』、『電磁力』そして『重力』を十分精確に取り扱う必要がある。そこで我々は2012年に世界に先駆けて3次元一般相対論ニュートリノ輻射(磁気)流体コードを開発した。本セミナーでは超新星爆発計算における数値計算について、また我々の最新の計算例、特に『重力波』に関連する研究結果を紹介する。
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第6回 "中間子のボース・アインシュタイン凝縮と冷却原子気体"
講演者: 初田 哲男 氏(理研)
日程: 2013年5月11日(土)13:30ー15:30
場所: 千葉工業大学新習志野キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
中性子星内部に現れるような極低温・超高密度核物質では、中性子超流動、陽子超伝導、中間子ボース・アインシュタイン凝縮、カラー超伝導、など様々な物質相が実現していると予想されている。本講演では、まずこれら諸相について概観する[1]。次に、中間子のボース凝縮をとりあげて、それに類似した凝縮相を双極型相互作用を持つ冷却原子気体で実現する可能性について論じる[2]。
参考文献:
[1] T. Hatsuda and K. Maeda, "Quantum Phase Transitions in Dense QCD",
in "Developments in Quantum Phase Transitions" ed. L. D. Carr
(Taylor and Francis, 2010)
[2] K. Maeda, T. Hatsuda and G. Baym,
"Antiferrosmectic ground state of two-component dipolar Fermi gases:
An analog of meson condensation in nuclear matter",
Phys. Rev. A 87, 021604(R) (2013)
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第5回 "高分子の結晶化と構造乱れ:表面構造の乱れを利用したポリブテン樹脂の耐熱結晶化(発表ファイルは内部のみ公開)"
講演者: 山下 基 氏(千葉工大)
日程: 2013年4月6日(土)13:00ー15:00
場所: 千葉工業大学芝園キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
高分子材料の結晶成長と、高分子結晶化における界面の果たす役割を紹介します。高分子・プラスチック材料や液晶などのソフトマターは、ナノメートルスケールの薄さの板状の結晶や構造が積み重なった集合体を形成します。このため、ソフトマターは、その内部に膨大な面積の表面を含んだ、表面だらけの材料です。一般の結晶性材料(ハードマター)では、構造乱れを限りなく少なくすることで力学強度や耐熱性などの物性を向上させるのが“常識”ですが、結晶化高分子材料の場合は逆に、ソフトマター材料の内部に存在する表面の構造を乱れさせることで物性を強化できることが分かってきました。
今回のセミナーでは、
・高分子材料の結晶化とはどういった過程か
・結晶化高分子材料の耐熱性はどういったファクターで決まるのかといった基礎的な内容を紹介したのち、
・結晶表面の構造乱れのエントロピーの熱力学的な検出
・構造乱れを利用した耐熱性能の強化
などの最近の研究テーマについてお話しします。
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第4回 "デルタ展開と逆ラプラス変換:強結合展開の連続極限近似への応用"
講演者: 山田 宏文 氏(千葉工大, 数学)
日程: 2013年2月22日(金) 15:00―17:00 (注:いつもと曜日, 時間が異なります。)
場所: 千葉工業大学芝園キャンパス8号館1F8106教室 (注:いつもと場所が異なります。)
<<要旨>>
格子上の物理系における強結合展開あるいは高温展開から連続極限の近似を考えるうえで、デルタ展開およびその延長線上の逆ラプラス変換の果たす役割を紹介したいと思います。
デルタ展開や逆ラプラス変換は、格子定数にかんする変換を考えるものであり、さまざまな物理量を格子定数の関数としてみることを前提としています。変換されたものの方が、変換前のものよりも、連続極限の近似にさいして有効であることがそのような変換を考える理由となります。今回の紹介では、あまりなじみのないテーマであることも考慮し、現在進行中の研究をのべるよりも、紹介を念頭においたざっくばらんなプレゼンテーションになります。具体的な物理模型としては、イジング模型や非線形シグマ模型を題材としてとりあげます。
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第3回 "BCS-BECクロスオーバーとユニタリーフェルミ気体(発表ファイルは内部のみ閲覧可)”
講演者: 作道 直幸 氏(東大)
日程: 2013年1月12日(土) 13:30―15:30
場所: 千葉工業大学芝園キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
2004年、液体He3を除いて初めての中性フェルミ超流動体が、冷却原子気体(K40とLi6)で実現されました。冷却原子気体は、温度、原子数密度、閉じ込めポテンシャルの形状と次元性、原子間相互作用の強さと符号など、系の性質を決定するほとんどすべてのパラメーターを連続的に変化させられる、究極の人工量子物質です。中でも著しい特徴は、原子間相互作用が外部磁場によって変調できる点です(フェッシュバッハ共鳴)。冷却フェルミ原子気体においては、この性質を利用すると引力が0の理想気体から、2つの原子が分子ボソンを形成する系まで、様々な系が実現できます。このとき、引力が弱いと低温でBCS超流動体になり、引力が十分強いと分子ボソンのボース・アインシュタイン凝縮(BEC)が実現されます。このBCSからBECへの連続的な変調をBCS-BECクロスオーバーと言います。BCS-BECクロスオーバーの中間領域は、S波散乱長が無限大に発散した「ユニタリー気体」と呼ばれる強相関の量子多体系になっており、理論的な解析が特に難しいことが知られています。ユニタリー気体の性質を理解することは、高温超伝導のメカニズムの問題や、クォーク・グル―オンプラズマや中性子星などの原子核物理の問題にも知見を与えると期待されています。今回のセミナーでは、冷却原子系における実験と理論研究の現状のレビューをメインに話します。「BCS-BECクロスオーバーとユニタリーフェルミ気体」について、どこまで理解されていて、何がわかっていないのか、ということをなるべく広い分野の方に理解してもらうことを目指します。
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第2回 "Thermodynamical description of hadron-quark phase transition and its implications on compact-star phenomena"
講演者: 安武 伸俊 氏(千葉工大)
日程: 2012年 12月1日(土) 13:30—15:30(注:この日に変更いたしました。)
場所: 千葉工業大学芝園キャンパス2号館4F物理第5研究室(注:いつもと場所が異なります。)
<<要旨>>
One of the most promising possibilities may be the appearance of quark matter in astrophysical phenomena in the light of recent progress in observations. The properties of deconfinement is not well understood, but the thermodynamical aspects of hadron-quark (HQ) phase transition have been extensively studied in recent years. Then the mixed phase of hadron and quark matter becomes important; the proper treatment is needed to describe the HQ phase transition and derive the equation of state (EOS) for hadron-quark matter, based on the Gibbs conditions for phase equilibrium. We here use a realistic EOS for hyperonic matter in the hadron phase. For quark matter we further try to improve the previous EOS by considering other effective models of QCD. One of the interesting consequences may be the appearance of the inhomogeneous structures called ”pasta”, which are brought about by the surface and the Coulomb interaction effects. We present here a comprehensive review of our recent works about the HQ phase transition in various astrophysical situations: cold catalyzed matter, hot matter and neutrino-trapped matter. We show how the pasta structure becomes unstable by the charge screening of the Coulomb interaction, thermal effect or the neutrino trapping effect. Such inhomogeneous structure may affect astrophysical phenomena through its elasticity or thermal properties. Here we also discuss some implications on supernova explosion, gravitational wave and cooling of compact stars.
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第1回 "カラー超伝導における渦"
講演者: 新田 宗土 氏(慶応大)
日程: 2012年10月20日(土) 13:30—15:30
場所: 千葉工業大学芝園キャンパス12号館6F小会議室
<<要旨>>
物質を中性子星内部のような高密度にすると原子核の構造が溶けてしまい、核子(陽子や中性子)で構成される核物質になるが、さらにより高密度にすると、核子の構造さえも溶けてしまい、核子の構成要素であるクォークからなるクォーク物質になる。特に、低温・高密度において、クォーク物質はカラー超伝導体になることが理論的に示されている。カラー超伝導は、カラーゲージ場が超伝導状態であると同時に超流動状態でもある。もし、カラー超伝導体が中性子星内部で実現しているとすると、その高速回転のために必ず超流動渦が生成され、おそらく格子を組んでいる。特に高密度の極限では、カラーフレーバー固定相が予言されており、そこでの渦について議論する。この渦は、非アーベリアン渦と呼ばれ、超流動渦であると同時にカラー超伝導渦(カラー磁束チューブ)でもある。この新しい渦により、物性系と類似のあるいは物性系にはない新奇の現象が生じる。ここでは、渦糸間相互作用、集団座標(渦に捕らわれた非アーベリアン南部ゴールドストーンモード)の有効理論、渦に捕らわれたマヨラナフェルミオン、渦と電磁場やグルーオンやフォノンとの相互作用、カラフル渦糸格子、宇宙偏光板としての渦糸格子、ストレンジクォーク質量の効果、閉じ込められた量子カラーモノポール、カラー超伝導と核物質のインターフェース、特にそこで現れるカラフル・ブージャム(超流動3HeのA相とB相の境界に現れるものの類似物)などについて紹介する。
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